角田光代

『それもまたちいさな光』(Kindle版、2012/11)

『オール讀物』掲載後、文庫オリジナルで刊行。TBSラジオでのドラマ化が前提にあったようで、ラジオ番組をめぐって交差する人々の話になっている。 感想としては、野島と珠子の関係性が『私のなかの彼女』で用いられた設定と似通ってるなあと。 「野島恭臣は…

『私のなかの彼女』(新潮社、2013/11)

ものすごく興奮をおぼえる作品だった。これほど先が読みたくて止められなかったのは、勝目梓の『小説家』以来だと思う。 内容を書くと、私小説ではないが、部分的に「私」がうかがえる小説、といったところだろうか。1980年代半ば、年齢的に著者と重なる主人…

『空の拳』(日本経済新聞出版社、2012/10)

タイトルは「そらのこぶし」と読む。そりゃそうだろと思うかもしれないが、連載時とあるブログ*1に「くうのこぶし(たぶん)」と書かれていた。 「いやいや違うよ」と連載開始の告知を見直した私。しかし「こぶし」というルビはあれど、「空」のほうは何もな…

池田進吾さんとのトーク 「ボクシングを書く(描く)ということ」

きのう18:30から、紀伊国屋書店(新宿南店)7階のサザンシアターロビーにて。 『空の拳』と『空の拳 挿画日記』の発売記念なのだが、両方買わないと整理券がもらえないということで、少しハードルが高い。しめて3675円。それだったら、なにかおいしいものを…

『よなかの散歩』(オレンジページ、2011/4)

エッセイ集。食べ物の話が多い。個人的にひっかかったのは、サークルのたまり場だった店で供されるカルボナーラの話(p.15-17)。 早稲田でカルボナーラといったらあそこなわけだが、私はこれを食わずに卒業したことをすごく後悔している。知人にそうもらし…

サイン会(三省堂書店有楽町店)

このまえ朝日の「売れてる本」*1に、文庫版『八日目の蝉』が9刷100万部と出ていた。私は思わず印税がいくらになるか計算してしまったが……、そんな人気作家の新刊『よなかの散歩』(オレンジページ)の刊行を記念したサイン会。 - 開始時間(18:30)ぐらいに…

『青春と読書』2009年1月号 第32回すばる文学賞受賞記念対談として、角田光代×天埜裕文の「『携帯』によって生み出された重厚な文学」が掲載されている(全5ページ)。対談のために6冊も角田さんの本を読んだという意欲的な天埜さん。 『青春と読書』2008年3…

100%ORANGE絵『銀の鍵』(平凡社、2003/3)

映画『過去のない男』の「感想文」と著者がいう小説作品。記憶をなくした女が、異国らしき地でさまよう。 影響されたとタイトルをあげているぐらいなので、チェックしたいとは思った。しかし、DVDをレンタルするという習慣がなくてね……。しかも、レンタルし…

松尾たいこ文・絵、角田光代解説『空が高かったころ』(ポプラ社、2007/12)

本書のプロフィールでは、彼女の絵についてこう表現されている。「フラットで大胆な構図と独創的なクリーミーな色で描かれた作品」 構図はもっといえば、強調したいものを大きく配置している。それでいてバランスが崩れない。というか、新たなバランスが構築…

角田光代・松尾たいこ著『なくしたものたちの国』(集英社、2010/9)

短編が5つ。ある女の子の小さなころから、大人になりて後までのシーンが、連作になっている。 一読した感想は怖いなあと。童話のような世界を描きながら、忘却の怖さ、真実を知る怖さが描かれている。それらとどう向き合っていくかにも触れているとはいえ、…

角田光代×松尾たいこトークイベント

18時から青山ブックセンター本店カルチャーサロン*1にて。 『なくしたものたちの国』(集英社)の刊行記念で、トークの模様は『小説すばる』に掲載されるとのこと。それなので、以下は延々延々と雑記。 - 終了後のサインは上記の本プラス1冊まで。今回のよう…

『ひそやかな花園』(毎日新聞社、2010/7) 私の好きな映画にダンカン監督の『七人の弔い』がある。親子7組が夏休みに「キャンプ」へ出かけるが、それがただの「キャンプ」ではないことに、子どもは気づいていく。いったい大人は何をたくらんでいるのか……。…

司修解説『ロック母』(講談社文庫、2010/6)

これまで単行本に収録されなかった作品をまとめた短編集。いってみれば余りものなのだが、だからこそ作家の特徴が強くにじみ出る。 描くのは大問題ではなく日常の細々としたこと。一見ふしぎな行動も読み終えるころには納得させられてしまう。

佐々木敦解説『学校の青空』(河出文庫、1999/5) 全4編からなる短編集。うち3編が1994-95年の『文藝』に掲載されたもの。もう1編が書き下ろし。 「青空」というタイトルで想起されるような、よくある青春ものを角田さんは書きはしない。であれば、本書に記…

田中弥生解説『おやすみ、こわい夢を見ないように』(新潮文庫、2008/6)

7作のつらなり・その他については、解説が非常にわかりやすく書いている。ただしあくまでも解説であって、立ち読みしている人をレジへ向かわせる力はない。 読中ひとつ気になったのは、「スイート・チリソース」で図書館に現れる浮浪者ふうの女と、表題作に…

いしいしんじ解説『恋するように旅をして』(講談社文庫、2005/4)

『恋愛旅人』を改題しての文庫化。奥付の初出一覧を見ると、前半はほぼ書き下ろし。後半は雑誌・新聞に掲載されたものになっている。 前半は以後の旅ものではあまり見ない軽妙な話が多い。とくに異国で性交渉を迫られ、いかように逃れたかを記す「旅のシュー…

中江有里解説『薄闇シルエット』(角川文庫、2009/6)

これぞ角田光代という感じの1冊。本屋で立ち読みしているとき、これは既読だと勘違いしてしまった。p.109-110のかくれんぼのくだりとか、たぶんほかでも書いてるもんな。

サイン会

『水曜日の神さま』(幻戯書房)の刊行記念。16:00から三省堂書店(神保町本店)にて。 開始30分後に到着。1F会場でサイン中の角田さんをちらりとながめた後、エレベーターで5Fへあがる。 というのは、会場は1Fなのだが、並びの列は階段にできるからだ。足で…

『水曜日の神さま』(幻戯書房、2009/7)

主として旅にかんするこれまでの文章をまとめた1冊。つくづくいいものを書いてるなあと思う。このなかでどれがよかったと取り上げはじめたら、きりがない。 - p.158の初出が、「野『生』時代」というよくある誤植。

『12星座の恋物語』(新潮文庫、2009/6)

12星座×男女で計24の物語が収められている。人物の書き分けを求められたことで、いままで角田さんが書かなかったようなキャラクターが出てきて楽しめる。鏡リュウジの解説はまったくいらなかったと思う。

藤田香織解説『恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。』(角川文庫、2009/2)

・解説者に同じく、文体に違和感がある。後のほうにいくにしたがって、その文体は姿を見せなくなるが、なにゆえか。やはり激動? ・トークショーなどを聞いても思うのだが、角田さんは日常における些細な法則に対し、どうしてこんなにセンシティブなのだろう…

『森に眠る魚』(双葉社、2008/12) ここ数年読んだ小説のなかで、いちばん面白かった。お受験が盛んな地区で子育てをする母親5人の物語なのだが、そのあまりのリアルさに、小説であることを忘れてしまう。彼女たちが抱く感情のひとつひとつが、もう事実とし…

三浦しをんさんトークショー

14:00過ぎから、ABC本店脇カルチャーサロンにて。大ざっぱな内容は、新刊『光』、実際の出来事をもとにして書くこと、メディアをにぎわせた事件など。ふたりは(古い言葉かもしれないけど)「つーかー」だから、安心して話を聞いていられた。以下、メモと感…

養老孟司・角田光代著『脳あるヒト心ある人』(扶桑社新書、2008/9)

産経新聞紙上での往復書簡をまとめた本。日常の出来事を違った観点から考える、といった話が多い。 考えて、考えて、そしてまた考えて、という本は、まとめて読むと疲れるなあというのが、正直なところ。

『三月の招待状』(集英社、2008/9) 初出は『小説すばる』で、直木賞を取った後に連載が始まっている。描かれるのはいかにも角田光代な世界。そんな「いかにも」を、あえてここでもう一度、というところに意味があるのかもしれない。 - 7月のトークイベント…

サイン会@有隣堂(アトレ恵比寿店)

『三月の招待状』(集英社)刊行記念。19:30から。 2時間もまえに着いてしまった。しかし、立ち読みした『hon-nin』があまりに面白かったので、退屈を感じることもなく。

鴻巣友季子さんとのトークイベント 15:00から、オリオン書房ノルテ店ラウンジにて。鴻巣さんの新刊『孕むことば』(マガジンハウス)の発売を記念して。 いきなりの余談だが、会場のロケーションがとても素晴らしい。客から見ると、話し手たちの奥がガラス張…

サイン会 『何も持たず存在するということ』(幻戯書房)の刊行記念。三省堂神保町本店にて。 書店に着きくだんの本を探してみると、残り1冊だった。まあ、会場のほうにはたくさんディスプレイされてるんだろうけど。 それで、その1冊だが、一番下に置かれて…

『福袋』(河出書房新社、2008/2)

230ページちょっと。さほど分量はないのだが、重厚感のある造本。こういうのは、河出のお家芸という気がする(悪い意味ではない)。 本書は全8編からなる「連作小説集」。どの話も、拾いものをしたりだとか、新たな何かを発見したりという点で内容が共通する…

『オール讀物』12月号 同級生対談角田光代×酒井順子「私たち、団塊の世代が嫌いです」(全9ページ)。 全然話は変わり、そしてまたどうでもいいことなのだけど、コバルト時代の角田さんの作品を読んで気になったのが「下世話」という言葉。これ、最近の作品…