鈴木成一著『装丁を語る。』(イースト・プレス、2010/7)

過去に自らの手がけた本をピックアップ。装丁の意図を解説したり、裏話を打ち明ける1冊。
思いつくままに感想を書いてみると、まずカバーの写真だけで鈴木成一のすべては理解できないよな、ということ。当然、文字の組み方などにかかわってる例もあるだろうから。
あとは全体を通して、引き出しが多彩だなと思った。それはアイデアだけではなく、起用する人間もそう。息子だとか、請求書の文字が気になっていた業者にまで題字を書かせている……。
本書ではあまり触れていないことで、もう少し言葉がほしかったのが、文庫化の作業について。真逆のイメージで作成した上下巻が、文庫化にあたって3分冊に。仕方なく中間バージョンをイラストレーターにお願いした、という例が本書には出ている(宮部みゆきブレイブ・ストーリー』、p.60-61)。
しかし、もう少し様々なケースを見たかった。たとえば、単行本そのままダウンサイズすることもできたのに、あえて趣向を変えた作品もあるだろう。まあ、本の数だけ解説が出てくるところを厳選したのが本書なのだから、仕方ないといえば仕方ない。
とりわけ印象に残った本がふたつ。ひとつめは石田衣良『美丘』(p.186-187)。AV女優はいいとして、角川の社員を裸にしてしまうか……。本人にとったら得がたい経験だろうな。
もうひとつは、木村秋則のドキュメンタリー『奇跡のリンゴ』(p.150-151)。カバーは木村の豪快な笑顔。これが売れた後、2匹目ねらいで出た本は「ほとんどこんな感じでしたね」とぼやく鈴木成一
どれどれとネット書店で「木村秋則」を検索……。笑っちゃうぐらい同じ構図だらけだった。でも、2匹目ねらうんだったら、むしろ同じじゃなきゃいけないのかもしれないな。そう同情もする私。
奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)すべては宇宙の采配リンゴの絆―“奇跡”を支えた真実の人間ドラマ
木村さんのリンゴ 奇跡のひみつ (ムー・スーパー・ミステリー・ブックス)あなたの人生に「奇跡のリンゴ」をつくる本木村秋則と自然栽培の世界「お役に立つ」生き方 ~10の講演会から~