『さすらい猫ノアの伝説2 転校生は黒猫がお好きの巻』(青い鳥文庫、2012/7)

内容はさておき、これどういう理由で書いたんだろう。たとえば『なぎさの媚薬』だったら、官能小説が好きだから4冊分も続いたと説明がつく。
しかし、本書は2作目として書くほど愛着があったのか。別にあったらあったでいいのだが、私にはそう考えられない。
ではなぜ書いたのか。青い鳥文庫の戦略として、2冊にしたいというのがあるんだと思う。その2冊が面白ければ、次に読む本も青い鳥文庫にしようとなるから。ちなみに本書の帯にも、2冊で応募するフェアの券がついている。
それで内容だが、期せずしてよかった。舞台的には、ヒントをくれる猫の登場だけが前巻と共通で、単独でも問題なく読める。
主人公はあちこち転校している女の子。彼女が6年生にして初めて、田舎の学校へ通うというのが物語のはじまり。
転校を繰り返すのはもちろん著者に重なるわけだが、自らが経験してきたであろう転校生の心境、そして転校生として生きる術(すべ)が、ふんだんに盛り込まれている。小説を書いていながら、転校論みたいなところもある。そのなかで箴言がこれ。
「転校生は誰とも『幼なじみ』にはなれない。でも、『親友』なら、途中からでも間に合う」(p.208)
転校を経験したものでなければ、出てこない言葉だと思う。

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話は変わるが、個人的に重松清と対談してほしいのが大島優子。ふたりの器用さが私のなかではすごく重なって、共通点はなんだろうと考えたら転校経験が大きいんじゃないかな、と。そのへんの話を『yom yom』あたりで読んでみたい。