テッド・Y・フルモト著『バンクーバー朝日軍 伝説の日系人野球チーム その栄光の歴史』(文芸社、2008/5)

鎌倉の公文堂書店で購入。サイン本というか献呈本かな。1080円だった。

まずはじめに、この本の出版状況がややこしいので整理しておく。
2008年に本書が刊行。翌2009年には東峰書房からも出る。サブタイトルの「日系人」という部分が「サムライ」に変更され表紙も異なるが、内容はおそらく同じ。この2009年版は2014年に電子化された。「はじめに」では映画化について触れられている。
やっかいなのはここからだ。
2014年に上記とは別で、『バンクーバー朝日 日系人野球チームの奇跡』が文芸社文庫から刊行された。電子版を立ち読みしたところ、登場人物の名前を変えている。そして冒頭は同じシーンを描いているものの、大幅なリライトがされている。つまりは別物である。
その他、漫画化されたものや、翻訳、続編、別著者のもの、映画のノベライズなども存在している。

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それでは本書の話へ。出だしに「実話に基づくフィクション」(p.5)とある。対戦の記録がほとんど残っていないため、試合シーンは創作にせざるをえなかった、とラストで説明されている。
私は朝日のドキュメンタリーや映画をすでに見たが、一番大きな違いは日系人排斥に至るプロセスが本書では詳述されているところ。
あとは勝つばかりでなくうまくいかないこともあったり、内部対立や引き抜きが発生していたのを知り、へえと思った。
映像で見てきた世界を、本書でより深めることができた。