橋本倫史著『ドライブイン探訪』(筑摩書房、2019/1)

『月刊ドライブイン』vol.01-12をまとめたもの。奥付に「加筆・再構成をほどこし単行本化」とあるが、私の見る限り内容的な追加はなかった。一番大きな違いとしては、vol.08に登場した「ドライブインもちや」が丸々未収録となっている。ページ数の都合か、はたまたお店の事情か。収録順については、本書のセクション分けに合わせて少し変えてある。
著者の橋本さんは、本書に登場するドライブインを再訪・再々訪、つまり3回訪ねたと書いている。その表現を借りるなら本書は私にとって再訪となるわけだが、なかなかに面白い体験だった。
当時のメモと見比べてみて、まったく同じことを思ってるなあとか……。読みに差が出た部分はあまりなかったかもしれない。人間の興味対象は簡単に変わらないのか。もしくは私に成長がないだけか(笑)
『月刊ドライブイン』では2店でペアみたいな読み方ができた。お店や人の記録であるのはもちろんだが、私はけっこう商売のヒントをもらうような感じで追っていた気がする。
しかし1冊にまとまり新たに構成された順で読むと、ヒントとかそういう印象にはならなかった。まぎれもなく帯の惹句にある「戦後のあゆみが見えてくる」そのものなのだ。
まえがきで「二〇〇軒近い店を訪れた」と橋本さんは書いている。そのなかから取材する店を選んでいるわけで、「戦後のあゆみ」が浮かび上がるのも納得がいく。
月刊の際と同様、最後に登場するのはドライブイン薩摩隼人。1冊の並びで見ることによって、トリに配したねらいがよくわかった。彼ら夫妻の物語には戦後が凝縮されていた。
文庫での再々訪も楽しみ。
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昨年の夏前まで『月刊ドライブイン』各号の感想を書いてきたが、vol.04だけはそれをしていない。SNSでも言われていたが、この号は誤植の類が多く正誤を調べてるうちに面倒になってしまったというのが理由。
それらの大半は本書で直っていたが、未修正だったものもあるのでメモしておく。ふたつとも『占領者の眼』という本からの引用部分。

(本書p.102)不道徳なことが行われている→(引用元)不道徳なことが行われている
(本書p.104)ジャンク・ピープ→(引用元)ジャンク・ープ
※赤字は当方にて。

 それともうひとつ。p.104に一九六二年の『オキナワグラフ』からの引用が載っている。この雑誌は電子版を購入できる。私も原文を参照しようと入手したのだが、一九六二年のどの号にも該当部分が見つからなかった。
これについては、調べる時間や機会があったら追記するかもしれない。