単なる雑記

小学校のころ、道具箱なるものがあった。テープとか色鉛筆とか、学校で使う道具をまとめておく箱だ。普段は机のなかに入れておき、学期末になると持って帰るよう先生にいわれていた。
それで、である。2年生だったか3年生だったかのあるときにも、家に持ち帰った。しばらくして気づく。箱のなかに他人の物がまぎれていることに。その定規には「O家」という名前が書かれていた。
まあ、それだけなら返せばいい。しかし、そういかなかったのは、「O家」が転校していたからだ。
母親に話したら、担任だった先生に「O家」の引っ越し先を聞いてくれた。そして、「間違えて持ってました。ごめんなさい」と添えて、定規を送る。
「O家」は、お礼の言葉と近況が書かれた手紙をくれた。サッカーチームに入って、大変だけどがんばってるみたいな内容だったかな。上品でおぼっちゃま然とした人間で、字がすばらしく綺麗だったのを覚えている。
そんな出来事を思い返し、ふと思う。もしこれが個人情報にうるさくなったいまだったら、定規を返せていただろうかと。