『新潮45』4月号

小山市幼兄弟投げ捨て殺人 事件レポート」全8ページを書いている。
事件は昨年9月11日、自分の家に居候していた男(小林保徳、のちに覚せい剤やってたことがばれて逮捕)の子ども2人を川に投げ捨てたというもの。もちろん投げ捨てた下山明宏も覚せい剤をやっていたんだけど、そのことばかりに目を向けていたんでは、事件の本質を見失うのではないかと彼女は考えた。
そこで、下山の生い立ち、結婚、離婚、再婚、また離婚という乱れた人生、かっての先輩小林との再会、下山が自分の子を大切に思い、小林から遠ざけようとしていた様子などを関係者から聞き取る。ここまではずっと情報だけ(私はこの事件にまったく興味がなかったから、どこまで既出で、どこからが新情報なのかよくわからないけど)。
ラスト2ページでは、事件発覚後、下山の子どもがどうしているかを探る。それで下山の子を引き取ろうとしない別れた母親を批判的に書いた後、「(下山の子ども)2人を(あたかも存在していないかのように)消してしまうのがいいことだろうか?」というふうにまとめた。
けど、この最後の部分、物書きのきれいごとにしか受け取れなかったな。もし私が同じ境遇に立たされたら、別れた犯罪者の子どもを連れて暮らそうなんて考えない。仮にそうしたとしても、その行動の裏には、善人ぶりたい気持ちがあるんじゃないかと思う。
だから著者には、せめて「子どもを引き取ることを拒む母親の気持ちもわからなくはないが」と譲歩してほしかった。冒頭にある彼女の肩書きは「ノンフィクション作家」。もはや市井の人ではないんだなと、ちょっと残念だった。 
今月の『新潮45』は他にも、村山望「『東洋の魔女』たちのマル秘結婚プロジェクト」全7ページが面白かった。お見合い相手探しに、これほどまで熱心になれる大松博文監督の面倒見のよさは、指導者をしている人なら、見習わなければいけないと思う。魔女たちの結婚を見届けたのちに、なくなってしまったけど。ちなみに、巻頭のグラビアページにも、魔女たちの写真が1枚載っていた。