『西の旅 Vol.1 2004春』(京阪神エルマガジン社

中場利一さんと重松清が、指定された季節ごとのお題と、3つのキーワードを組み込んで創作を競う、「ある日・ある街」という企画がある。全4ページの上段が中場さんの文章、下段が重松さん。
第1回は、お題「港町」、キーワードが「さび」「タオル」「民宿」。中場さんは、港町を生まれ故郷として設定し、面白おかしなエピソードを中心に。重松さんの文章は、かって取材でお世話になった人の葬式で港町にきているという状況。中場さんとは対照的に、しんみりとした話を綴っていく。
オール讀物』2004年10月号の「タオル」は、この文章を再構成したものみたい。キーワードの制約がなかったら、文字数がもっと長かったら、もっといろんなことが書けたのにという思いがあったのかな。でも「タオル」だって掌編で、そんなに枚数たくさんじゃなかったけど。
以下は余談。この雑誌に重松清が書いていることを知ったとき、バックナンバーは国会図書館で読めばいいやと思った。が、NDL-OPAChttp://opac.ndl.go.jp/index.html)を検索しても『西の旅』が出てこない。だから、ここで所蔵していない資料は手元に置いといても損はないだろうと考え購入した。
本が届いてからわかったのが、この『西の旅』はムックだから、雑誌コードがついてるけど、ISBNもあるということ。つまり、雑誌ではなく一般資料で検索していれば、所蔵していることがわかったのだ。いい勉強になった。
雑誌じたいの内容は、タイトルそのままに西の旅について。西っていっても幅広く、富山、福井あたりから、四国、福岡まで扱われている。今号は巻頭に阿久悠(淡路島生まれ)のインタビュー。「あくゆう」という名前の由来が笑えた。

『西の旅 Vol.2 2004夏』(京阪神エルマガジン社

「ある日・ある街」の今号のお題は「峠」。キーワードは「宿題」「ライオン」「秘密基地」。中場さんは今回もコミカルに。重松さんのは『オール讀物』2004年10月号のすねぼんさんにつながるんだと思う。トラックの運ちゃんだった父親が死んでしまったという設定。『オール讀物』では故人の写真を見るというエピソードが付け足されたのかな。手元にないので詳しく覚えてないけど。

『西の旅 Vol.3 2004秋』(京阪神エルマガジン社

今号の「ある日・ある街」のお題は「橋」。「栗」「バイク」「高層ビル」が3つのキーワード。今度は中場さんがトラックの運ちゃんの話。前2回と違いひたすらさみしい。重松さんのは、渡し船の船頭をするおじいちゃんが、重要な役割を担っている。橋ができて、車で渡れるようになり、その役目を終えたかにも思えたんだけど…。読み終えて、感動の一言だった。
45ページから「広島安芸といえばAtoZ」という特集があり、これのHでヒバゴンで映画についての言及も。

'04年ヒバゴン忘れまじと映画制作(渡邊孝好監督)がスタート。脚本は重松清氏、ヒロインは井川遥。オール広島ロケの『いとしのヒナゴン』にヒバゴンブーム再来か!?(引用者注:映画タイトルはのちに『ヒナゴン』へと変更)

脚本が重松清というのは、単なる間違いなのか、あるいは当初、重松清が脚本も担当する予定だったのか。まあ、どっちでもいいけど。

『西の旅 Vol.4 2004冬』(京阪神エルマガジン社

「都会」がお題の「ある日・ある街」。キーワードは「メガネ」「ちらほら」「さようなら」。中場さんは整備がいい加減なバイク屋を面白く、かつしんみりと描く。重松さんの小説は、東京へのあこがれを抱く女の子を、1つ年上の男の視点で見るというもの。Vol.3に続いて重松ワールド炸裂。

『西の旅 Vol.5 2005春』(京阪神エルマガジン社

「ある日・ある街」は、と思って探してみたら、季節が一回りした前号で終了したようだ。かわりに「街に深入り」がスタートしていて、モブ・ノリオさんが書いている。

子どものこと話そう

春ということもあって、先生についての話題。高校は進学校だったので、私にとってのいい先生は、教え方がうまい人。小学校中学校のときは、あんまりどんな先生がいいとか思わなかったな。もっとも親は「だれだれ先生がいい」という話をひんぱんにしてたけど。