北原亞以子著、半藤一利解説『父の戦地』(新潮文庫、2011/8)

3年も読まずに放置。その間、著者はお亡くなりになってしまった。
内容は戦中の体験を振り返っての記録。特に従軍した父が幼い著者に送った絵葉書が核になっている。
全15回の構成。1回分は20ページに満たない。この短さが、些細なことまで思い出すのにはよかったのではと思う。
戦争のもたらす寂しさ・惨めさに触れ、私は「こんなことを二度としてはいかん」とベタなことを思う。ベタなれど大事なことだろう。
一番印象に残ったのは、手紙のやり取りについて語った部分。戦中ゆえ検閲があったのだが、著者はこう表現している。
「父と私の間に軍の目が入っていたことを思うと、今更のことではあるが、私の気持を少し横取りされてしまったように思える」(p.144)
それにしても、横取りするのにかけるコストだってバカにならないわけで、検閲などということが成立したのもいま考えると驚きである。