桜庭一樹著『荒野 12歳 ぼくの小さな黒猫ちゃん』(文春文庫、2011/1)

山野内荒野(こうや)、12歳。父は小説家。そんな彼女が過ごす学校での日々、家での生活。
ちゃんと読むのは初めての作家だが、面白かった。女の子を描いた小説はいくらでもあるが、本作品は日常の変化が感情に対してもたらす影響にすごくセンシティブだと思う。制服を身にまとう、ブラジャーをつける、家庭環境が変わる、恋……。エピソードとして書くだけでなく、心の動きにまでつなげているから、女の子の真に迫った感じが出ている。
あとはセリフがユーモラスなのもいい。父親正慶の発言はもちろん、江里華が「好き」を説明するところ(p.71)なんかは笑うと同時に考えさせられもする。

      • -

単行本を3分冊しての文庫化。1ヶ月に1冊ずつ刊行。こういう形式だと、誰が解説を書いているのか現時点ではわからない。
私としては重松清かなと予想している。根拠は巻末にあるブックリスト。そこの筆頭に重松清の著作が載っている(文春文庫「エンタテインメント」のくくりで、著者名が「し」から「な」の部分を抜粋してある)。文春文庫は知らないけど、新潮文庫だと最初はたしか解説者のはず。でも、続刊のほうにもブックリストがついているとしたら、この根拠に意味はなくなるか。
ついでに書くと、予想は重松清だが読んでみたいのは五木寛之