勝目梓著、池上冬樹解説『小説家』(講談社文庫、2009/10)

3年前の親本は、重松清が帯文を書いていたので読んだ。これぞ極上のエンターテインメントだと思った。
今回文庫版での再読だが、重松清に帯を依頼した編集者(?)はすばらしい判断をしたなと思う。中上健次との距離、娯楽小説への転向、ライティングマシーンたる自覚……。著者と重なるところが非常に多い。

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著者はかつて炭坑で栄えた土地を再訪する。そこで出会った老婆の言葉が身に染みる。
「打ち死ぬまでは生きとらなならんとがこの世の定めげなですけんで、何がていうて面白かこともなかばってん、こげんして息ばしとっとですたい」(p.164)
せめて勝目梓のこのような面白い小説があれば、寂しい思いをせずに済んだだろうに。