盛田隆二著『散る。アウト』(毎日新聞社)

「2004年10月25日発行」だから、だいたい1年前ぐらいに出たということになるのか。そのとき、生協で『いとしのヒナゴン』の隣に、この本が置いてあり、買おうかと思って手にとってはまた戻すを繰り返していた。「こんなふうにして本を買っていると、置き場がなくなってしまう」という思いがして。
それで、約1年が経ったいま、購入したわけは、著者のサイトで主人公が早稲田卒のホームレスいうのを知ったから。
その主人公が金策のために、危険なビジネスに応じてしまい、モンゴルであれこれするというお話。
まあ、よく取材したなっていうのは伝わってくるけど、小説としての面白みはいま一歩。この種のものでは、垣根さんの『ワイルド・ソウル』が抜きん出ている。

「じゃあ、アパートの家賃はいくらぐらい?」
「ドルでいうと、一ドルから四ドルぐらい。水道代と電気代は別です」
「月一ドルか、安いな。モンゴルで暮らしたくなった」(p.105より)

という個所を読みながら、思い出したことがある。著者ウェブサイトに、「これは安すぎるんじゃないか」みたいな書き込みがあり、それに対して盛田さんが「自分もそう思って、何度も確認した」というふうなやりとりだったと記憶する(いまその書き込みを探したのだが、見つからない)。
作家が自分のサイトを持つことについて、私は「その時間を仕事に回せば?」というスタンスなのだが、こういうやりとりを見ると、サイトを運営するのも悪くないかなと思えてくる。