丸山あかね著『耳と文章力 上手な文章を書く秘訣』(講談社、2008/3)

あたかもハウツー本かのようなタイトルだが、まったく違う。本書は、著者がある疑問を抱くことから始まる。それは、絶対音感があるように、「絶対文章感」が存在するか、というもの。著名人にその疑問をぶつけ、回答に納得したり、ときに翻弄されながら、考えを深めていく。
最初のほうは、何を軸に取材すればいいか、焦点が定まらない。しかし、第3章の冒頭、耳と文章の関係を知らされたところが転機。絶対文章感から派生して、「手話と日本語」というテーマを得る。その流れで、絶対文章感の有無についても、著者は結論を出す(p.177-178あたり)。

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3章以降が中身のある内容だけに、それ以前の部分で話があちこちいってるのがもったいない。思考を重ねてるということなんだろうけど、そのプロセスが見えなかった。だから、読んでいてもいっしょに考えられないというか。

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以下、著者が話を聞いている人の名前を抜粋(かっこ内は初出ページ)。

第1章:大野晋(p.14)/なかにし礼(p.23)/徳大寺有恒(p.24)/勝目梓(p.26)/室井佑月(p.29)/藤沢周(p.32)/高樹のぶ子(p.35)/重松清(p.36)/堀江敏幸(p.39)/小池真理子(p.43)/城戸朱里(p.49)
第2章:森脇逸男(p.59)/城山邦紀(p.83)/藤田敬治(p.95)
第3章:服部公一(p.111)/外山滋比古(p.114)/緒方英秋(p.128)
第4章:斉藤道雄(p.140)/生田目美紀(p.152)/石原保志(p.157)/横内謙介(p.168)/杉山良一(p.169)/岩田誠(p.174)/松本陽一(p.182)/稲野豊隆(p.184)/下岡美由紀(p.185)/清水義範(p.189)