広池浩司著『入団への道 夢をつかむまでの軌跡』(ザメディアジョン、2010/3)

全日空の一般社員だった1997年、カープの入団テストを受験。ドミニカ修行を経て、翌年ドラフト8位で指名を受ける。入団後は主に中継ぎ投手として活躍し、2010年限りで引退。ライオンズの打撃投手に転身する。そんな著者のブログから選りすぐった1冊。
内容は約半分が、タイトルにある「入団への道」。そのなかでも異国で過ごした日々に大半があてられている。
やはり本にまとまるだけあって、べらぼうに面白い。いくつか印象に残ったところをあげると、ドミニカ編では大目標だけでなく中期・短期の目標も設定すべきだと気づくシーン(p.38-39)。具体的なエピソードつきで語られると、大切さが身にしみてわかる。
そのドミニカから帰り、テスト生として参加した秋季練習で、若手選手から馬鹿にされるところも読みごたえがある。「25歳半人前」「(著者が)プロ入りして10年やるとしたら35歳。絶対無理」。そういって笑われたことが、反骨心を植え付けた(p.74ほか)。高卒間もなかったこの選手、本になるにあたっての加筆で、「今でも現役」だと明かされている。それで林昌樹だとほぼわかってしまうわけだが、購入した人へのサービスとしては悪くない。今でもウェブではただで読めるわけだからね。
あとは、嫌なサインの頼まれ方(p.72-73)がとても参考になった。こういうことをきちんと形にして伝えられる選手の、いかに少ないことか。ライオンズのスタッフになった著者が、これからどんな気づきをブログで示してくれるのか。それが楽しみでならない。
2010年5月4日第2刷発行。