大阪学芸高校の件について、続報にいくまえに記事を誤読してるらしき人がけっこう多いので、ちゃんと字数を割いて説明してみたい。その誤読というのは「どうやって70超の学部・学科の受験日を調整したんだろう」といったものである。もちろん、そんな日数の試験を受けられるわけがない。
考えてみよう。センター試験があるのが1月中旬、それ以降毎日1校を受けたとしても、3月の終わりまでかかってしまうではないか。そんなことはないのである。
この生徒が受けたのは、「センター試験の成績のみで合否を判定する試験」。だから、各大学個別の学部・学科別の試験というのはないのだ。つまり、センター試験の好成績によって、それだけの数の学部・学科に合格できるということ。出願しさえすれば。その出願する金を高校が出していたというのが、いま問題とされていることなのだ。
**************************************************
それで続報。7月23日付朝日新聞朝刊「別の2高校も合格実績向上」より抜粋。
仁川学院高校は2003年から受験料肩代わりを始め、今春は7人が関関同立と甲南大の計50学部・学科に出願していた。また、履正社高校も数年前から毎年十数人の生徒の受験料を負担し、最も多い生徒で10前後の学部・学科に出願していたという。
もうひとつ。こちらは下記のasahi.com記事からの抜粋。
神戸学院大学付属高校ではこの2年で4人が計20学部に合格していたという。同校は「まだ歴史の浅い学校で、進路指導のため合格ラインなどのデータが必要だった。合格実績を上げる目的もあった」としている。
http://www.asahi.com/national/update/0723/OSK200707230070.html
**************************************************
ああ、やっぱりこういう手法は横行してるんだなあというのが率直な感想。もっとも後者(神戸学院大付属)のいい分はわからないでもない。
一応説明しておくと、後者がいう合格ラインのデータというのはこういうこと。事前に想定された合否の線引きがあって、それに近いと思われる得点の生徒を何人か出願させる。たとえばある人は(センター試験が)650点で受かったけど、別の人は647点で落ちたとする。そうすればこの間に合否の区切りがあることがわかるわけだ。そうして、来年度以降の参考にすると。まあ、1年あたり2人を出願させただけで、本当に有効なデータがえられたのかどうかはあやしいところだが。
**************************************************
あと、「関西人はせこいからこういうことをするんだ」みたいな意見も見かけた。これについては、関東の難関私大がセンター試験のみでの受験方式を設けていないか、あったとしても人数が極端に限られるゆえに、高校側がこうした手法を取れないということだろう。
逆に関西の私大はなぜセンター試験だけで合否判定する方式を用意しているのか。それは単純な話で、いろいろな方式で入試をやれば、それだけ受験料が取れるからだ。
だから、「関西人がせこい」というのは、一面ではただしいのかもしれない。金にせこいという意味では。