「ザ・ノンフィクション アイドルの家 涙の数だけ抱きしめて」

すごく面白かった。複雑な環境に身を置くと、やはりいろいろ考えるのだろう。その分、自分の言葉を持ってるなあ、立派だなあと思った。
取材対象のアイドルはふたり。
一人目の大竹愛子は、酒浸りの父・愛してやまない弟と生活。母は酒をやめない父を嫌い、母国フィリピンへと去った。だから家事をするのは愛子。仕事をしている最中は家のことを忘れられると語る。父に思いを訴える背景で、ゴキブリがうごめいてたのは印象的だった。
彼女のブログを読むと、東日本大震災の直後に番組ディレクターと打ち合わせをしている。つまり、そこから約1年を追ったのが本作らしいのだが、その間でさえも境遇は変遷する。たいへんななかを生きるティーンエイジャー、素直に応援したくなった。
もう一人の原口貴妃(きさき、Tokyo Cheer2 Party)は、母とふたり暮らし。仕事のたびに奈良から上京する生活。交通費は母が負担。習い事もしている。当然、お金はかさむが「離婚したからといってやめさせたくない」と母。
貴妃はあるときマネージャーから「努力が見えない」と叱責される。そうして打ち明けた感情が特有だなと思った。本気にならないのは彼女なりのシールドだった。本気でやっていない状態なら、まだ直す部分があると開き直れる。しかし、本気でやっていて何にもならなかったら、もう自分を守るすべがなくなるのだ。
番組は、そんなスタンスにケリをつけた彼女をとらえて終わる。テレビをにぎわすスーパー中学生より、よほど彼女のほうがスーパーだ。いい番組を見せてもらった。
5/20、フジテレビにて放送。