中村安希著『インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日』(集英社、2009/11)

第7回開高健ノンフィクション賞受賞作。もとは道中にブログを書いていて、それを再構成したのが本作品になるらしい(そこらへんの断りはなされていない)。
一言で感想をいえば、とても充実した読書をさせてもらった。彼女はストーリーとして旅を綴るのでなく、そこでなされた思索を書いている。だから濃密だ。エピソードをただ文章にするだけの紀行文とは、何もかもが違っている。今年のベスト1として、本書を推したい。
面白いところはいくらでもあるが、もっとも印象に残ったのが「一般的に『貧困』は、農村地帯にあるものではなく、都市に存在するものです」という言葉(ウガンダで孤児院を経営する方の夫人、p.161)。実に慧眼だと思う。
読んでいてわからなかったこともある。著者は武装策として、ミッキーマウスの覆面をすると紹介している(p.191)のだが、それがどうして武装なんだろうか。おおもとのブログには書いてあるかもしれないと、「ミッキーマウス」で検索してみた。つまるところ、そんなのをしてナイフを持っていたら、ヤバイ人にしか見えない、ということらしい。なるほど。
こういう旅をするにはいくらぐらいかかるんだろうということもまた、読者としては気になった。読み進めるとそれは書かれていて、予算180万円だそうだ(p.202)。バックパッカーをするのにも、金は必要なんだなあ……。