永江朗著『暮らしの雑記帖 狭くて楽しい家の中』(ポプラ社、2007/10)

永江さんを見たのは、これまでに3回。1回目は早稲田での鼎談。3回目は先日のABC。それで2回目はというと、今夏の東京国際ブックフェアであった。少し立ち聞きしたその講演の内容を一部あげると、「オピニオン誌は、記事を切り離してホチキスで綴じ、折り畳んだ形にすれば、胸ポケットに入り、満員電車でも取り出して読める」ということだった。いってみれば、「読書ハック」か。彼は、そういうことに関心が高いんだなあと思った。
今回の本は、ポプラ社サイト上の「永江印の生活本舗」(http://www.poplarbeech.com/nagae/nagae.html)をまとめたもので、彼が読書だけではなく、生活全般について効率や満足度を高めようとした記録といえる。
といっても、単にその方法を紹介するのではない。彼が重点を置いているのは、生活に思いをめぐらし、それをよくしようと試行錯誤することだ。ゆえに、本書からは方法ではなく、姿勢を学ぶことができる。
気になったところをふたつほど。
「身長一六一センチで短足O脚、エラの張った大顔でメガネなしでは歩けない私」(p.221):低いといっても、160はあるのか。
「村上恭一教授も風呂敷愛用者の一人だった。しかし、よく考えてみると、あのころの教授はまだ四十代前半で、いまの私よりも若い」(p.263-264):何十年違いになるのかわからないけど、私も村上の授業を取っていたことがある。風呂敷ではなかったけど、かといって会社員が使うような鞄でもなく、デイパックだったなあ。
彼の授業は特に関心ある内容ではなかったが、学生のほうではなく、空(くう)を見つめて話すその様子は印象に残っている。それは彼自身が語るのではなく、まるで何かが彼に語らせているかのようだった。
教科書も思い出深い。当時パラフィン紙というものの何たるかを知らなかった私は、彼の教科書にもともとかかっていたそれを、はがそうとした記憶がある。
最後に誤植らしきものふたつ。
(簡易折り畳み式ナイフ)):閉じ括弧だけふたつになっている(p.255)。
次に本を作業代の上に積み上げる:作業「台」か(p.291)。