『空中庭園』

60点ぐらいの作品なのかなと思ってたら、85点レベルで、非常に満足している。
「ホラー」だとか「怖い」というふうに出演者たちはいっている。が、実際はそういう要素がありつつも、笑えるところが多く、観ていて飽きない。これぞエンターテインメント。
観る側が解釈し、理解すべき映像効果、シーンも、あとから説明が加えられたりと、親切だった。いや、ひょっとすると親切ではなく、客のことを見下していて、これぐらい説明しなきゃ、やつらはわかんねえだろうなって思ってるのかもしれないけど。
パンフレットが1000円と高い。でも、値段以上のすさまじい充実ぶり。目次がついていないので、収録内容を抜き出してみる。

・introduction
・「エクソダスの物語」猪野辰(SWITCH編集長)
・cast profile
・撮影:藤澤順一インタビュー
・照明:上田なりゆきインタビュー
・録音:柿澤潔インタビュー
・美術:原田満生インタビュー
・衣装:宮本まさ江インタビュー
・ヘアメイク:小沼みどりインタビュー
・ヘアメイク:徳田芳昌*1インタビュー
・編集:日下部元孝インタビュー
音楽監督:zakインタビュー
・楽曲:ヤマジカズヒデdip)インタビュー
・エンディングテーマ:UAインタビュー
・特機:多正行*2インタビュー
・フラワーデコレーション:猪本典子インタビュー
・CG視覚効果:道木伸隆インタビュー
・プロデューサー:菊地見世志インタビュー
・豊田組空中庭園撮影日誌(フォース助監督平井勇太)
空中庭園決定稿
・小説『空中庭園』続編「夜道の家族」角田光代

普段であれば日の目を見ないような、撮影だとか照明…といった人たちの声が、ちょろっとではなく、しっかりと各2、3ページ収められている。こんな仕事をしているんだということがわかったし、何よりスタッフの目から見た『空中庭園』というのが語られていて、興味深かった。
そして、角田さんによる『空中庭園』の続編である。舞台はあれから3年後。さほど変わっていない京橋家から、ミーナはあることを見取る。それは、「家族っていったい何なのか。(中略)書いても見つけられなかった答えをこの映画は見せてくれた」*3と角田さんがいっていた答えそのものなのだ。
だから、その答えが何なのか、『婦人公論』10/7号に掲載された小泉×角田の対談を読んで確認してから、この小説を読むのがいいと思う。
ほかにパンフレット内で気になったところをふたつほど。
まずはUAのインタビューより

映画のなかでさと子が”大切なことはすべて知る必要はない”みたいなことを言った時、”絵里子ってほんとの子供じゃないのかも”って思ってしまって。監督は”そこまで考えてないんだけど”って言ってたけど。

鋭いよなあ。原作に対応箇所はないみたいなので、監督がそういうことを考えてない以上、そこではいおしまいなわけだが。
もうひとつ、編集の日下部さんのインタビューから

――監督と衝突したことはないですか?
「(略)雑誌にマナ(鈴木杏)に似ている人が出ているという長回しで撮ったシーンで、雑誌のクローズアップがなかった。もう一度撮りたいんだ、ということを言われたんです」

これは、エンドロールにスーパー写真塾と出ているのを見て、「そんなメジャーな雑誌なら、アップのシーンがあってもよかったのに」と思っていた。
なるほど、監督は撮り直したかったけど、そこは大人の事情で無理だった、というわけか。
実際に使われているのは『素人投稿写真』という架空の雑誌らしい。そういえば『スーパー写真塾』よりも、版型がでかかった気がする。
渋谷のユーロスペースにふたつある劇場のうち、1のほうにて鑑賞。初日、しかもテアトル新宿での公開がなくなり、東京はここだけということで満員。
受付でチケットを買って(あるいは前売り券を出して)、それに整理番号を押してもらうというシステム。その番号順に入場となる。
場内について。傾斜と席の窮屈さには不満だが、音響はいいと思う。
中にあるトイレは狭くて汚いので、同じフロアの劇場外にあるトイレがきれいでおすすめ。だけど、こっちも広くはない。
売店には、エビアンとパックのジュースぐらいしか飲み物がない。劇場を出て、通りの向い側に自販機が5、6個まとまって置かれているところがあるので、こちらで買うのがいい。
あと、同じ建物の1Fにアニメイト渋谷店があるので、暇つぶしには適している。
劇場についての大きな目印がないので、初めてきた私は、ちょっと見つけづらかった。まあ、ユーロスペースはもうすぐよそにうつり、あたらしい会社がいまある劇場を運営していくということだけど。

*1:読みは「みちよ」。

*2:読みは「おおのまさゆき」。

*3:空中庭園』予告編におけるコメント