三浦しをん著『むかしのはなし』(幻冬舎

4/29にあるイベントの予習を兼ねて読んでみた。
かぐや姫や桃太郎といった昔話をモチーフにして、それを現代風にアレンジしたもの、と考えればいいのかな。書き下ろし340枚の連作集。全7編で最後だけ中編。ほかは短編。
各編を少しずつリンクさせていって、最後に結実させるのは、お見事の一言。楽しんで読めた。
ところで、作者は東京生まれの早大卒ということだけど、神奈川に土地勘があるのだろうか。p.135の青葉台とか、p.75の(直接そうは書いてないけど)小田原とか。ちょっと気になる。
素晴らしい装丁は、鈴木成一デザイン室。表紙カバーと、本の内部に、シミというか痛みのようなものをつけることで、古本チックな仕上がりになっている。カバーをはずすと、東京都狛江市付近のものという美しい写真が使われていて、手がかかってるなあと思う。

坪内祐三著『私の体を通り過ぎていった雑誌たち』(新潮社)

坪内さんは、1958年5月8日生まれ(覚えやすい)なので、1983年の私とはちょうど25年の差がある。けど、早稲田のことが書いてあったりして、読んでいて「これって何のことだろう」というような疑問は湧いてこなかった。以下、読んで思ったことを適当に書き連ねたい。

『女性自身』の特に「シリーズ人間」という連載(今でも続いていて、あの田村章が執筆していたりする)を愛読した。(p.22)

何の断り書きもなく田村章と書いてしまうのがいい。

(『明星』に)「好き?嫌い?しらみつぶし全調査」が載っている。
例えば森田健作が好きなものは、日本刀(「モチ、大スキ」)、高倉健、処女、セーラー服、グラマーな女、ビキニ(「これ、どういうワケかすき」)で、嫌いなものは、ポルノ、キャバレー、ネグリジェ、パンスト、コンドームといった感じだが…(p.85)

「処女が好き」なんて、テレビスターがいって許されたのがすごいと思う。

N君は、チェーン店のラーメン屋「熊ぼっこ」を指差し…(p.90)

あの早稲田通りにある”いずま店”「熊ぼっこ」もチェーン店なのかな。

出身高校を聞かれて、早稲田高校と答えると、多くの人は(特に地方出身の人は)、ああ早実ですねだとか、学院ですねだとかと、条件反射的に口にするけれど…(p.96)

私も、同い年の先輩が「早稲田高校出身」というのを聞いて、早(稲田)実(業)とか(早稲田大学高等)学院のことなのかと思っていた。そもそも存在すら知らなかった、早稲田高校なんて。いい勉強になった。

高校に入学した私は、朝、通学する時はさすがに高田馬場から学校まで都バスか地下鉄を利用したものの…(p.99)

いったい何が、どう「さすがに」なのだろうか。歩けよなあ、ツボウチ青年。私からすると、早稲田から馬場までの、ほんの20分の距離も歩けない、あるいは歩かない学生の将来が心配でならないんだけど。

高田馬場のBIGBOXの二階にあった三省堂書店で買った。(p.119)

当時から三省堂だったんだ。ああ見えて、歴史があるんだなあ。

数日後、A君から電話があった。ベンジンでもその液でも全然”スミぬり”は消えなかった、と。(p.155)

重松さんも、マーガリンで局部を消そうとした、なんて話をしてたけど、秘められた部分を見ようとすることが、この頃の男の大きな関心事だったのかな。
あとがきでは、坪内さんの文章にたびたび登場する「UK君」が江木裕計(えぎひろかず)さんだということがわかる。これを知っていると、酒日誌や読書日記がもっと楽しめるなと思った。ちなみに彼の姿は『鳩よ!』2001年9月号(重松特集)、『編集会議』2001年4月号(林真理子表紙)、『噂の真相』1999年10月号などで見ることができる。
新潮社のサイトによると「1960年生まれ。1983年同志社大学卒」ということだから、坪内さんよりちょっと年下なのか。