河井大輔「サハリンのイトウ」(『小説トリッパー』2004年夏号)

第15回朝日新人文学賞受賞作品。ストーリーを一言でいってしまうと、巨大な「いとう」という魚見たさに、ある男が北海道からサハリンへと出かけていくというもの。紀行文なのか小説なのかは、よくわからない。
受賞のことばによると、分量は300枚。三つに章立てされていて、1・渡航劇、2・ソビエツキー・ソユーズからの手紙、3・サハリンスキー・タイメンとなっている。1、2はいい加減なロシア人相手に、サハリンへ向かう船に乗せてもらう交渉をしたり、現地についてからやはりずぼらな人間に、日本から運んできた車を売ろうとする、という内容。ゆえに、肝心の「いとう」を探す部分は3章だけだ。この点に選考委員の批判が集中する。
「最後の白いいとうと遭遇する場面を中心に、あるいはサハリン入国の顛末を中心に、切れ味のよい短編にしたらよかったのではないかとは、選考委員の一致した意見であった」(奥泉光
「最後の部分だけを短編にするか、全編を旅行記として情報伝達に徹するかなら良かった」(高樹のぶ子
このように最後を独立させろ、というのが選考委員の主たる意見だ。
私は1、2章をとても楽しく読んだが、3章になって退屈になった。選考委員の言葉を借りると、1、2章が「素材」、3章が「小説」だからだと思う。読者としては、こういう感想を持つことが許されるかもしれない。
しかし、選考委員はそれではいけない。たぶん、素材のよさで選考しても、その著者がこの先、いい素材を選び続けられるという保証がないからだろう。この「サハリンのイトウ」を読んで、選考委員の仕事の何たるたが、少し、わかった気がする。以前重松さんが『青春と読書』でいいたかったことは、こういうことだったのか。
お断り:イトウは魚編に鬼だけど、漢字が出ないのでカタカナで表記した。

島田裕巳創価学会とは何か」第12回(『寺門興隆』2004年9月号)

この回だけしか読んでいないけど、興味深い内容になっている。人はなぜ創価学会に入るのかとか、学会員と非学会員との結婚など、タイトルどおりに創価学会とは何かがわかる。自分の周りに学会員がいないだけに、こうした内容に関心を持つのかもしれない。現在も連載中だけど、本にまとまるなら読んでみたいと思う。下は筆者のblog。
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