『景色のいいドライブ[関西版]』(京阪神エルマガジン社、2019/3)

タイトルどおり、車で行く景色の素晴らしい場所が全20コースで紹介されている。
私は関東在住かつ運転もしないので、知っているところがひとつしかなかった。そういう意味では他エリアの読者のほうが新鮮に読める面もあるかもしれない。私も行ってみたいなというスポットを四つほどチェックしておいた。
そんなムックの中央に掲載されているのが橋本倫史さんの「名阪国道ドライブイン再考」。分量は約5500字で訪ねているのは三軒。ドライブイン赤目、味のお福、山添ドライブイン
三つ目の山添ドライブインは『ドライブイン探訪』にも登場。もちろん再訪なので、情報がいくつか重なる以外は新しくなっている。
味のお福は店の外見のみ同書で触れられていた。お読みになった方はわかると思うが、免許が失効中でバス移動だったため降りるわけにはいかなかった。だから外見だけになったという……。
ドライブイン赤目は初出。本誌で印象的だったのは、店主の梶谷龍人さんが土産物の売り方を語る部分。草餅に「赤目でとれたよもぎ」と書いておくことで、地のものを食べようかとなる。「別に赤目でとれたもんで作らんでも美味しいと思うけど、そういう時代に変わってきたね」と梶谷さん。体験がより強く求められているということなのかな。音楽業界みたいに。
味のお福は周辺の交通量が落ちてもなお営業を続けている。それは名物のどて焼を目当てにお客さんが来てくれるからで、30人前を持ち帰る人もいるのだとか。味を知りたいという要望はすべて断ってきたそうで、そこまでアピールされるとどれほどのものか気になってしまう。
山添ドライブインは店を切り盛りする吉田富美代さんの体調や、店舗の今後が主な話題。ここでは食べたものを客が自己申告することになっている。そのメリットを語った部分が素敵だなあと思った。いわく、代金を受け取るとき「美味しかった」などと温かく声をかけてもらえる。だから続けるのが苦にならないと。
これは他の伝票がない店にも共通する思いかもしれない。記憶にとどめておきたい。