沖縄の離島を訪ねて、そこに生きる人の暮らしや島のあゆみを綴っている。
いつもながら橋本さんの本は面白いし、橋本さんらしさのある本だなと思った。
おんなじものを見ても、人によってどこに関心をもつか、どういう物語のなかに位置づけるかは違うわけで、そこのアプローチにらしさを感じる。
具体的に言うと、戦後日本の成り立ちとかたどってきた歴史とか、そういうものを浮かび上がらせたいのかなと。どういう資料を見れば助けになるかが経験でわかるんだろうなというのは読んでいて思う。
あと本書で感心したのは、すでに水納島を離れた中学2年生の子に話を聞く場面。小学校生のころの写真を見せられたその子は「懐かしいな」と口にする。
それを受けた著者がこう書いている。
「中学生の頃のぼくには、懐かしいという感情はなかったような気がする」
たしかになあと思った。よほど感覚の研ぎ澄まされた人じゃないと、素通りしてしまいそうだ。