先崎学著『うつ病九段』(Kindle版、2018/7)

べらぼうに面白い本だった。
ことのはじまりは、2017年7月末。対局の1週間前に著者の不戦敗が発表される。初報には理由が載っていなかった。
これだけ前もって告知される不戦敗とは何なのか。不祥事を起こしたのかなど、さまざまな憶測がとびかった。いや、正確にいえば私も憶測をしていた側の人間である。

順位戦B級2組】村山七段−先崎九段戦は村山七段の不戦勝
http://i2chmeijin.blog.fc2.com/blog-entry-6482.html
※当時のまとめサイト記事。

続いて体調不良であることや、7ヶ月の休場が発表される。病名は明かされず、憶測はとまることがなかった。

先崎九段の順位戦不戦、体調不良が原因
http://i2chmeijin.blog.fc2.com/blog-entry-6518.html
先崎学九段、2017年9月1日〜2018年3月31日まで休場
http://i2chmeijin.blog.fc2.com/blog-entry-6554.html

しばらくして、囲碁棋士の配偶者と教室を始めるというおしらせが出た。将棋ファンはひとまず安心をする。

先崎学九段と囲碁・穂坂繭三段による囲碁・将棋スペース「棋樂(きらく)」がオープン
http://i2chmeijin.blog.fc2.com/blog-entry-7089.html

年度があらたまり、著者は対局の舞台に戻ってきた。
病名が明らかになったのは、本書の発売情報が出たときである。
読んで一番に思ったのは、「答え合わせ」本だなあと。
詳細を伏せていた間に何が起きていたのか。それがわかり、バラバラだった線が一本につながるというか……。
将棋ファン、とりわけ憶測で盛り上がっていた人間にはたまらない一冊になっている。
個人的には、闘病記という読み方をしなかった。ただ、そういう向きの方にもおすすめできる。
なぜか。入院中にエロ動画を見たことが書いてあるからだ。リアルを伝える覚悟があるから、こういう話題を文章にできるのだと思う。