フォトグラファーの主人公が息子を連れてアメリカはフロリダへ。ホテルの姿を写真に収めるべく、北へ南へ車を走らせるという長編小説。
率直に感想をいうと面白かった。写真家のリアルというか、一般人にはわからない面を知ることができる。それも単に情報として書かれているのではなく、物語の面白さのなかへ埋め込むことに成功している。
たとえば、街を撮影していて、通りすがりの人を写したくなるとする。気づかれたら、いい顔はされない。そこで主人公は小技を使う。
あるいは撮影にあたって許可を取る・取らないといったことも、重要な戦略であるらしい。
繰り返しになるが、こういった要素をストーリーに組み込めている。だから著者はうまい。
そしてもうひとつ。父子の関係がうつろっていくのも本書の読みどころ。どうして見事なエピソードを次々考えつくのだろうかと感心するのだが、その見事さがあだになりかけているかなとも正直なところ思った。