北上次郎著『エンターテインメント作家ファイル108 国内編』(本の雑誌社)
1作家につき1本(×108)の書評集。彼の書評について、まとめて読んでわかった特徴がふたつ。
ひとつは、「留意」「秀逸」「圧巻」といった熟語が多く見られること。文章の流れでものをいうのではなく、単語でずばっと評してしまうのだ。
私は、書評であってもひとつの作品みたいに書かれたものが好みだけど、彼のように、あくまでも本を評価することに徹するというのは、あっていいと思う。
もうひとつの特徴は、本人もあとがきで書いているが、著者の別の作品に触れることの多さだ。まあ、読んでるからこそできることなのだろうし、彼の書評が支持される理由もこの点にあるのかもしれない。でも、フェアだとは思わないな。人物評ならまだしも、書評なのだから。
通読してみて、手に取りたくなったのは3冊。佐藤多佳子著『しゃべれども しゃべれども』、下田治美著『愛を乞うひと』、山本幸久著『はなうた日和』。
いま検索して知ったのだが、『しゃべれども…』は映画化され、ちょうど来週の土曜から公開だそう。そして、その監督をしているのが、映画『愛を乞うひと』の平山秀幸。たまたま気になった本がつながっていることに少し驚き。