『別冊文藝春秋』2003年11月号(248号)
きょうは、『その日のまえに』(文藝春秋)に収録されなかった4編を読んできた。この号が私鉄沿線Ⅱの一発目で「メグちゃん危機一髪」が載っている。
アゴヒゲアザラシのメグちゃんが世間をにぎわせている頃、営業一課と二課を合併することによって、リストラがおこなわれようとしていた。
ものごとにはおわりがくるし、きそうになければ、むりやりにでもおわりにしてしまう。そんな人間の暗部を描いた作品。
『別冊文藝春秋』2004年1月号
「秘密基地に、午後七時」掲載。来年、本厄を迎える男5人が、同窓会をきっかけに、金曜の夜、秘密基地で子どもの頃していた遊びに興じるように。あるとき、そのなかの1人桑田が、息子を基地に連れてきたいという。その真意やいかに。
他人のことに、必要以上に深入りしないというのも、一種のやさしさ、か。秘密基地でいい歳した大人たちがボールを蹴って遊ぶという設定は、現実にはありえないんじゃないかと思う。けど、作品を読んで、こういうことがあったらいいし、あってほしいという希望を持たされた。
『別冊文藝春秋』2004年7月号
「秘密基地に、午前零時」掲載。舞台は1月号に同じ。ときは進み、本厄を迎えた5人。次第に集まるペースが鈍ってきたある日、秘密基地に見知らぬ自転車が置かれていた。いや、誰かが置いたんじゃなくて、捨てられたものなのかもしれない。名前は書かれている。
ネタバレになるから書きにくいけど、自転車をめぐる分断っていうのは、よくあった。私は切り捨てられる側じゃなかった。それゆえにわからなかった感情が、ここでは描かれていて、とても勉強になる。