『対岸の彼女』(文藝春秋)

早大OGの鏡

「まぐろづけ丼って覚えてる?580円だったんだけど、学生のころはそれがすごく高く思えて、憧れだったんだ」
「覚えてますよ、私も憧れでした。たしかカレーが170円で、一番安くて」(21ページより、漢数字は算用数字に改めた)

これが早稲女のあるべき姿だろ。カフェのランチなんか食ってるやつはだめだね。

小説における地名、風景

作品とかストーリーとかについては、みなさんがお書きになっているので、私はただ、面白くてどんどん読み進みたくなった、というだけにしておく。ところで、文中に磯子、反町、大磯なんていう、おそらく神奈川県民以外には、あまりなじみのない地名が出てくるけど、こういうのって、知らない場合、どうやって頭の中で処理してるのかな。なにもこの小説に限らず。あんまり意識してこなかったけど、地名を理解していたら、もっと小説の世界を楽しめた、なんていう本も、今まで読んだ中にはあったのかな。
また、角田さんが通った、早稲田の文学部のキャンパスと思われる風景もあった。これも同じで、読者に前提となる知識があったら、より共感できた、なんていうものもあったのかもしれない。

初出

別冊文藝春秋』2003年11月号から2004年7月号。本は買わずに図書館で借りる、という人は、予約待ちで大変だろう。『別冊文藝春秋』は隔月刊なので、5冊分。まとまって借りられるならば、そっちのほうが早いと思う。