代ゼミ今井、東進へ完全移籍

大手予備校代々木ゼミナールの英語科講師である今井宏氏が、来年度より東進ハイスクールに出講することがこのほど明らかになった。来年度代ゼミでは講義を担当する予定がなく、実質上「完全移籍」という形になる。*1

予備校業界っていうのは、サッカーの移籍市場と同じようなことが成立している。例えば、アルゼンチンやブラジルのクラブチームでプレイしているサッカー選手は、ずば抜けた技量を持った選手であっても、いきなりヨーロッパのビッグクラブに移籍することは不可能。まず、中堅クラブへと移って、そこでさらに頭角をあらわして初めて、チャンピオンズリーグで上位に進出するようなチームに買われることになる。
予備校講師も同じ。大学を出てすぐに代ゼミの講師になるのは無理で、マイナーな予備校・塾から、河合塾駿台を経て、ようやく代ゼミに入れるわけだ。なぜ、代ゼミで教えたいのか。サッカー選手同様、名誉だったり、お金の問題である。
そういうわけで、代ゼミは長らく、予備校で教えるものたちの頂点に立っていた。しかし、代ゼミを頂点としたこのヒエラルキー構造にも、変化が見え始めている。新進予備校の東進ハイスクールが、場合によっては代ゼミ以上の金額を用意し、講師を引き抜いているからだ。
今回の今井氏のケースも、その引き抜きの一環なのかもしれない。上位から基礎レベルまで幅広く担当する彼は、集客ということに関しては、間違いなく代ゼミでトップクラスで、その集客力を当てこんで東進が好待遇で迎え入れた、ということは十分に考えられる。
1990年代終わりに、彼も上に書いたようなステップを経て、代ゼミにやってきた。全国で受講可能な、ゆえに儲けの多い衛星放送(サテライン)授業も、移籍以来担当している。
だが、代ゼミの中で立場が苦しくなっていたのも事実である。私も彼の授業を取っていたからわかるのだが、性格の悪さ、授業の中身のなさ、次々と繰り出される嘘ゆえに、受講生や他の講師からの批判は絶えない。パンフレットに掲載される、自分の受け持つ講座の宣伝文において、「パラグラフリーディング」という言葉が嫌われていると見るや、「スピーディーな読解」に変更したりもした。元電通マンだけに、ここらへんは巧みである。そんなことを考えると、今回の移籍は、脱走とも思えてくる。願わくば、今井氏には、移籍をきっかけに心機一転し、受講生にとってマイナスとならない授業を展開してほしいものである。

*1:ソースはmilkcafeほか。ニュースっぽい文章になっているのは、私が勝手にそうしたため。