大崎善生著、森信雄解説『将棋の子』(Kindle版、2014/8)

Kindleストアには、講談社文庫版と角川文庫版の2種類がある。後者は紙の本としては存在していない。講談社文庫版を底本としているので内容はもちろん同じ。ただ紙の講談社文庫版にある森信雄の解説が、Kindleだと角川のほうだけに収録されている。

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成田英二という元奨励会員がいる。あるとき著者の大崎は、彼の連絡先が将棋センター気付になったことを知る。なにかを感じ取った大崎は成田のもとをたずねて旅に出る……。
おなかが満腹になる一冊だった。成田の母に対する愛に感動する一方で、転落人生にはひどく恐怖をおぼえる。1年ほど前、郷右近力という元奨励会員がカードの不正使用で逮捕されたのを思い出した。将棋に没頭せねばならない場所は、よかれあしかれ極端な人間を生むのかな、と。
また本書は成田の物語であると同時に、大崎のそれでもある。彼が将棋とかかわるようになった経緯や将棋連盟での日々についても興味深く読んだ。