飯塚祐紀著、小島渉構成『奇襲振り飛車戦法 その狙いと対策』(Kindle版、2014/12)

購入の理由は、角頭歩を指してみたかったから。
後手番で▲7六歩△3四歩▲2六歩のオープニングになったら、角交換からレグスペにしていた。しかし時間の短い将棋なら、ハメる余地の大きい戦法が有利。それで角頭歩を採用したいと考えた。
本書は全10章(戦法)からなる。列記しておくと、原始中飛車・端角中飛車・石田流・鬼殺し・急戦向かい飛車・強引向かい飛車・坂田流向かい飛車・鬼六流どっかん飛車・角頭歩・パックマン
全体としてはとても楽しめる1冊だった。奇襲本ということもあるし、味わい深い文章もいい。あとは局面図が1ページに2個と多く、どこに何が載っているかが一定。これがものすごく読みやすかった。駒を並べなくても、頭で十分理解できる。
以下では章ごとの感想を。

原始中飛車

飯塚の言うとおり、原始とは名ばかりで優秀な作戦だと思った。歩は突かずに飛車を中央へ。玉を移動して片美濃囲いを築く。角頭は金で受ける(角交換後の打ち込みにも備える意味も)。防御態勢が整ったら、5筋を伸ばし、右銀と合わせて攻めていく。攻撃力もさることながら、駒組みで相手の様子をうかがわずに済むのもいい。私としては中飛車の相手を居飛車ですることはないが、もし居飛車党なら対策は必須だと思う。

端角中飛車

これまたやっかいな戦法だ。序盤で▲9六歩から▲9七角と相手陣をうかがう。このときに銀やら金で角成りを受けると、振り飛車にしたいのにできないという状況が……。本書では居飛車の対抗法が紹介されているものの、簡単ではない。私の結論としては、▲9六歩が突かれた段階で飛車を振っておくのがいいかなと。そうすれば▲9七角に対してもすんなり美濃囲いにできる。

石田流

本書で取り上げているのは、△4四歩と角道を止めてから△3五歩を伸ばし、▲2四歩には△3三角で△3二飛という形。
うーん、指してみたいと思う魅力にはとぼしかった。

鬼殺し

特にコメントなし。

急戦向かい飛車

石田流の章の最後を△3二飛ではなく△2二飛とするバージョン。これも指してみたいとは思わず。

強引向かい飛車

▲2六歩△3四歩▲2五歩から△3二銀とする形。▲2四歩△同歩▲同飛に対しては△3三角とする。最後を△3一金は「現在も進化の途上」として、ほとんど記述がない。そこが残念。ある程度蓄積ができたら、『将棋世界』の付録などで紹介してほしい。
あとは章を通して、居飛車側が横歩を取る変化が書かれていないのは少し不満。

坂田流向かい飛車

特にコメントなし。

鬼六流どっかん飛車

指してみようとは思わなかった。ただ、角交換型の石田流に同じような飛車ぶつけが出てくるので、受け方の復習になった。

角頭歩

これから指していく上での基礎知識がついた。よかった。

パックマン

相手をもって受けるのが難しいと思った。本書で相手優勢のところでも、勝ち切るまではまだ長い。
【現在の棋力】将棋倶楽部24(2014年10月で引退):12級(最高R503、現R399)、将棋ウォーズ:【10分】初段【3分】初段【10秒】1級