雨宮処凛『右翼と左翼はどうちがう?』(河出文庫、2014/3)

本書の構成としては、最初にかつて右翼団体に所属した著者の体験がある。次に右翼と左翼の歴史を紹介し、各々の活動家に話を聞く。最後にまとめと、2007年に親本が出て以降の著者の関心事がフォローされている(加筆部分は20ページほど)。
著者の体験は他の本にもあるし、歴史の記述で目新しい部分はない。ただ、活動家の話は面白く読んだ。右翼・左翼3人ずつ登場するが、なかでも興味をひいたのが映画監督・足立正生。彼いわく「アラブの人の日常は政治状況がじかに左右する。だから、政治的に敏感だ」と(p.172)。そして日本は政治にそこまでの意識がないとも。
また自爆攻撃については、絶望的な現実がありそれを乗り越えて未来を見たいがための行動だとしている(p.173)。
私としては、納得するところが大きかった。攻撃を糾弾するまえに、どういった境遇がそれにつながったかを見るべきではないのかと。
雨宮は近ごろはびこるヘイトスピーチを以下のようにとらえている。
「一部の人から希望を奪い尽くしたら、『誰にどう思われてもいい』精神状態が生まれる。『普通だったら言えないような言葉』を公衆の面前で言えるようになる。だって、そのことがバレたとしても、失うものなどはじめからないのだ」(p.224)
私は岡本が自爆攻撃をとらえる物言いに共通したものを感じた。
本書への不満というか、読んでもわからなかったことがある。とりわけ右翼だと思うが、服装でひと目でそれとわかる人がいる。ああいうのの起こりを知りたかった。本書には思想面のことしか出ていないのが残念。