えのきどいちろう著『F党宣言! 俺たちの北海道日本ハムファイターズ』(河出書房新社、2010/12)

2003年8月からの北海道新聞での連載を収録。合間に他の媒体で書いたものも少し。
この手の本は古びてないことがよく評価されるのだが、本書にあるのは逆にタイムラグの面白さ。2004年のドラフト前、ファイターズはダルビッシュを指名するとの報道がなされた。それに対して著者は、ファンの後押しで一場を受け入れる空気ができれば、球団が「方針を変更しないとも限らない」(p.58)と書いている。いまから思えば、そんなことしないでよかったなあの一言である。
冒頭に記したが本書は2003年8月、つまり北海道移転の前年から始まっている。連載の最初のほうは、北海道の人にファイターズを紹介する形式だ。その雰囲気が徐々に消えていくのは見逃せない。著者には教えられるものが少なくなった。それはある意味、ファイターズが北海道へ浸透したことの裏返しなのかもしれない。
ミスを突っ込んでおくと、選手名の誤植はよくない。2006年のファイターズ日本一に多大なる貢献をしなかった外国人とはいえ、マシーアスマーシアスになっている(p.112)のはかわいそうだ。もっともその3ページ後では正しく記載されているので、チェックする人間が不統一に気づかなかったものかなと思ってしまう。