相席力学

世の中にはカウンターがなくて、テーブルのみという飲食店がある。そういう店で1人客だと、やはり聞かれるのは「ご相席でもよろしいでしょうか」ということだ。
私としては、相席になること自体は全然かまわない。知らない人がいたら、メシが食えなくなるなんてことはないし。
しかし、だ。
相席相手が先に食べ終え、テーブルにひとり残される。店員がいなくなった客の器を下げにくる。そして私は感じてしまう。「あんたも早く食べなきゃ、次のお客さんが入れられないでしょ!」という無言の圧力を。
そんなこともあって、相席になるときは、だいたい相手と同じくらいのスピードを心がけている。早くなりすぎず、逆に遅くもならないように。
このまえのカレー屋。相席になったのは、古本が入った袋を脇に抱えるおじさんだった。雰囲気は自民党の町村みたいな感じ。ああ、この人だったら、私のほうが遅いなんてことはなさそうだ。そう思っていたら、この町村似は「おまえ、大食いタレントか」という勢いでライスをかきこむ。そして、ちょっぱやでテーブルを後にしてしまった。
しょんぼり。
あのさあ、相席だったら、少しぐらいは相手にスピード合わせようと思わないものだろうか。友だちといっしょだったら、そうするだろう。それがなぜ赤の他人だと、「置いてけぼりにしてやれ」になっちゃうの? そんなの寂しいよ。
でもひょっとすると町村似は、他人のまえが恥ずかしくて、いっこくも早く食べ終えたかったのかもしれない。そんな人にまで、調整食いを強要するのもあれだなあ。あと、何か用事があったのかもしれないしね。