白石昌則、東京農工大学の学生の皆さん著『生協の白石さん』(講談社)

帯には

ひとことカード」傑作選、登場!

とある。しかし、「ひとことカード」のベスト版として読んだならば、明らかな間違い。
この本は、全4章立てになっていて、それぞれの章末に白石さんの文章がついている。このうち、3章の末尾で白石さんが書いていることを要約すると、次のようになる。

6月に入り、生協や商品と関係のない「非お店」(たとえば人生相談など)の投稿が増えてきた。それまでであれば、「非お店」とそれ以外のカードの数のバランスが取れていたが、「非お店」系があまりに増加。しかたなく、「非お店」の投稿も無理やり商品の宣伝になるよう回答して、バランスを取っていたが、それも困難に。結局、一部のカードを掲出するのを見合わせざるをえなくなった。

ひとことカード」を書く人は、いまなされている掲示を参考にする。だから、人生相談や受けをねらったカードで掲示が埋め尽くされることは避けなければならない。バランスが必要なのだ。
この本はそうした考えのもとになっている。もちろん、微笑ましい質問回答はたくさんある。しかし、それだけではなく、「0.3mmのシャープペンのしんですが20本入りで税込210円というのがあるはずです。それを入荷してくれたらうれしいです」なんていうのも、ちゃんと収録されている。
だから、傑作選では決してない。ここに載っている「ひとことカード」たちは、いってみれば、白石さんの努力の縮図である。私はたまらなくうれしい。この本が、単なる笑える1冊にならなかったということが。
余談だが、白石さんは東京農工大学の前は早稲田の生協にいらっしゃった。なので、そのときの話もいくつか出ている。当時、担当部署がトラベルとかそっち方面だったそうで、「ひとことカード」は書いたことがなく、農工大にうつりカードを書くようになって、早大生協のサイトに載っているリスト(http://www.wcoop.ne.jp/information/hitokoto/kako.htm)を参考にされたとか。