豊島ミホ著『ブルースノウ・ワルツ』(講談社)

まずは構成から。表題作である「ブルースノウ・ワルツ」という書き下ろしの中編と、『群像エクスタス』2003年5月号初出の「グラジオラス」という短編、そしてあとがきからなっている。
まず表題作。良家の娘である13歳の女の子楓は、その父親である至が研究目的で引き取ってきた純朴な野生児との関係の中で、「このままお嬢様として生きていって、私の将来はどうなってしまうのか」と不安に思う。
なんかよくある話だなあ、としか私には思えなかったけど、WEB本の雑誌では、まあまあな評価を得ている。
次に「グラジオラス」。主人公のまに子は毎年5月になると、部屋の窓からきりおが田植えをする様子を眺めていて、その様子が好きだった。だが、きりおはある年、交通事故でなくなってしまう。それ以来まに子は、きりおのことを忘れまいと、「今この瞬間にきりおといて、こんなことをしているだろう」という空想にふける。だがしばらくすると、イチトという男に惹かれ、きりおがなくなったことを肯定してしまう自分に気づく。
私が面白いとおもった箇所は、「海は空を映すか」、「田の水面は空を映すか」ということが話題に上がってるところ。なんか「打ち上げ花火、下か見るか? 横から見るか?」を思い出させた。ので、ここのところをストーリーの本筋にして書いて欲しかったなあ。