へらへらすること

衣笠祥雄さんがこの世を去り、3ヶ月になろうとしている。
現役時代を見ていない私にとって、偉大な人というのが最初のイメージだった。
それが変わったのは、バラエティへのゲスト出演。
有吉AKB共和国」というしょうもない番組が以前あり、そのしょうもないという言葉は否定ではなく、売りにしているところがあった。
衣笠さんはそこで、ちょっとしたお芝居に登場する。
細部は覚えてないけれど、こういうふざけた番組に出てくれるフランクな人なんだなあと思った。
以来、好感を持っている……。
亡くなった後、追悼のコメントや記事を読んだ。印象どおりの謙虚なエピソードがあふれていた。
それで思い出したことがある。
角田光代さんが、通っているボクシングジムの輪島功一会長について書いた文章だ*1

偉大なボクサーであったのに、会長はそれをひけらかすどころか、ずっとへらへらしているのだ。説教をすることもなく、上からものを言うようなこともない。本当にすごい人は、本当に強い人は、ちっとも威張る必要がないのだと私は会長に教わった。

そっくりそのまま、衣笠さんにも当てはまるだろう。
4月下旬に衣笠さんが亡くなり、翌5月、日本のスポーツ界は日大のタックル問題でもちきりだった。
そのなかで当時の監督が謝罪へ向かう際、ピンクのネクタイを着けて批判をよんだ。周囲からの助言はなかったのかという意見もあった。
ここで私はひとつの考えに至る。
本当にすごい人はそのすごさゆえに、へらへらしないと教わる機会がなくなってしまうのではないか。
間違いを指摘したら逆に怒るかもしれない人へ、親切をしようとは思わない。へらへらしていれば誰かが助けてくれる。
私は一生、他人から教えてもらえる人間でありたい。
――最後の締め、ちょっと強引でしたかね(笑)
・・・・
文中で取り上げた有吉AKB(衣笠さん出演回)の記事。
https://ameblo.jp/happy-smile-nanchan/entry-10798127824.html
https://ameblo.jp/happy-smile-nanchan/entry-10799332745.html

*1:文藝春秋』2008年9月号「日本の師弟89人」より、角田光代「へらへらの裏側」。