サタミシュウ著、壇蜜解説『彼女はいいなり』(角川文庫、2012/9)

購入して1年以上放置。このたびページめくって驚き。巻末の解説*1壇蜜。帯の写真には気づいていたが、解説もやっていたとは……。
ストーリーを大ざっぱに書くと、主人公は美樹という女みたいな名前の男。高校2年生で、幼なじみの恋人がいる。初体験は当然、彼女になるかと思いきや、運命がいたずらする……。
官能とは無縁のド青春な立ち上がりで、するする物語に入り込む。そして中盤以降はエロざんまい。もちろん面白く読んだ。満足な一冊だった。
気になったのは時代設定。主人公が高2夏の段階で、「去年の阪神大震災」とある。つまり作中の現在は1996年だ。これに著者はこだわりがあるようで、たとえばルーズソックスをどういう範囲の子が履いているとか、PHSは一部だけでまだ彼女の家に電話もするといった状況を丁寧に書き込んでいる。
はたして何のために1996年を選んだのか。それが私の読解力では見えてこなかった。
壇蜜の解説は、深い読みに感心させられた。まずは作中の引用。

「どうしたいの、鷺坂くん」
「もう一回、したいです」
「いやらしく言って」
志保先生はシートベルトを締めながら、目を見つめて言った。美樹はそのとき、ふと「エデュケーション」という英単語を思い出していた。(p.186-187)

壇蜜は調教=教育だと指摘しつつ、エグザミネーション(試験)にもなっている気がするという。つまり、作品の舞台が学校であると同時に、志保先生と美樹の関係性も学校めいたものになっている、と。鋭いなあ。

*1:正確には「解説に代えて」。