喜多條忠著『女房逃ゲレバ猫マデモ』(幻戯書房、2008/10)

神田川」の作詞家による初の小説。主人公は女房に家を出ていかれた作詞家。物語中ではふたつの時間が並行していて、一方では、現在の家庭におけるエピソードが描かれる。たとえば、奥さんがいなくなったことで、子ども2人の弁当を作らねばならなくったり、など。
他方は、主人公の生い立ちから学生時代、そして中退後に至るまでの過去の話。全体としては、合わさって主人公の生き様が理解できるという構成。

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私小説風に読めるところがこの本の特徴で、安兵衛湯からの帰り道、寒さで髪が固まるなんていうシーンもある。著者と時代は異なれど、早稲田に通っていた人間としては、たいへん面白く読ませてもらった。
下は愛猫について語る著者。
http://www.chunichi.co.jp/article/living/pet/CK2008102702000202.html

文春新書編集部編『論争 若者論』(文春新書、2008/10)

若者をめぐる論文・対談全13本。文春新書だから、当然『文藝春秋』が多いのかと思いきや、そんなことはない。内訳は、『中央公論』×3、『Voice』×3、『論座』×2、あとは1本ずつで、『正論』、『潮』、『現代』、『文藝春秋』、『諸君!』となっている。
オピニオン誌を普段読まない私にとって、新書でこういうものを出してくれるのはありがたい。