石原千秋著『中学入試国語のルール』(講談社現代新書、2008/3)

読売新聞に連載された中学入試の問題・解説を、大幅に加筆したもの。全16校分が収録されている。
一読して思ったのが、タイトルのルールはかっこでくくるべきではないか、ということ。
著者の主張は大ざっぱにいうと、こんな感じ。本文をいくら読み込んだところでも、答えが出せない問題がある。そういう設問にけりをつけるものは何か。「ルール」である。
中学入試は道徳的な側面を持つ。だから、文章に根拠がなくても、先生や親といった存在は正しきもの。そういう選択肢が正解になるのが「ルール」。

      • -

著者の主張は興味をもって読める。だが、全般的に解説が薄く、子どもよりは教える立場の人が参考にする本かなと思う。
もうひとつ。第6講で取り上げられてる片山右京の文章が面白かった(こういう人物の書いたものを入試で使うというのもまた面白い)。『負け、のち全開』(新潮社、2004/3)という本なのだそうだが、単行本は絶版で、文庫にも落ちていないらしい。

長谷川裕著『東大生が書いた「国語」のことを感動的に好きになる本』(ダイヤモンド社、2006/9)

こちらは高校受験を控えた中学生をメインターゲットに書かれた本。論説・小説・詩歌・古文・作文というカテゴリに分けて、問題に対する向き合い方などを伝授する。代ゼミの酒井敏行的な「分ける・つなぐ」の読み方を採用していて、設問への対処だけでなく本文の読み取りも重視するのが特徴。

      • -

私にとって高校受験は遠きむかしのことだが、楽しく読めた。とりわけ著者の豊富な知識が見られる脚注。なぜ長谷川は「ながたに」なのに「はせ」なのか、とか(p.134)。