三浦しをん解説『あしたはアルプスを歩こう』(講談社文庫、2007/7)

岩波書店から出ていた単行本を改題しての文庫化。一言でまとめてしまえば、角田さんがイタリアの山でトレッキングをしてきた記録だ。
しかし、ただの山登りルポにはなっていない。それはガイドとのやりとりがあるからだ。ルイージ・マリオさんというこの方、日本で仏教を学んだことのある僧侶だそうで、発言のひとつひとつが実に深いのだ。これがために、本書は文学味を帯びて引き締まったものになっている。
いうまでもないことだが、角田さんのマリオに対する的確な問いかけこそが、そうした深みのある発言を引き出したのだ。そして、それを漏らすことなく書き留めた。角田さんはいい仕事をしたなあと思う。