私の思うところの曽我部恵一

曽我部恵一の2冊目となる「待望の」エッセイ集が出るそうだ。その関係で検索していたのだが、1冊目の『昨日・今日・明日』(角川書店、1999/12)は、入手困難になっているらしい。オークションの落札記録などを見ると、少しばかりプレミアムのついた価格になっている。
自慢するようなことではない*1が、私の手元にはこの本がある。そのなかでいっとう好きなのが、「『風街ろまん』はっぴいえんど」(p.160-)という1編だ。
曽我部はそのレコードに、松本隆細野晴臣鈴木茂という3人のサインをそれぞれもらった。残るは大滝詠一。いったいどうなるのか…。これが、すばらしくいい話なのだ。と同時に、曽我部が人のサインをほしがる人間なのだということに、私は安心感を覚えた。というのは、彼のことを少しひねくれた嫌なやつだと思っていたからだ。それは、サニーデイ・サービスの『MUGEN』が発売された後のこんなインタビューによる(Text/大野貴史)。

―『MUGEN』というアルバム・タイトルにしたのは?
曽我部 普通に。全然意味ないんですけど。
―説明、終わりですか?
曽我部 うん。あうなーと思って。そのぐらい。まじで。ていうかさ、どうして”MUGEN”か、なんて気になる?
―気になりますよ。わざわざアルファベットになってるし。
曽我部 それを聞いておけば、文章が埋まるから聞いてるだけなんじゃないの?
―それを答えてもらうことで、このアルバムで何が表現したかったのかを知るきっかけになることがあるから聞いてるんですが。
曽我部 ああ、そういうのはね、僕らはないです。ないない。
(『オリコンウィーク The Ichiban』*2より。

どんないいアルバムを作っていても、この「文章が埋まる…」という発言がフラッシュバックして、好きにはなりきれない人間。それが私にとっての曽我部恵一

*1:なぜかというと、私が持っているのは重版だから。重版かかるほどだから、そんなレアでもないのではと思う。

*2:『MUGEN』がNOW ON SALEになっているので、1999年10月ごろだと思われる。