『ある子供』

観終えて帰る電車のなかでプログラムを読むまで、この映画のいわんとしていること、描こうとしたことがまったくわからなかった。そのプログラムによると、

現代の若者たちが抱える「私たちは大人になるのか、なれるのか」という困難を、厳しくも暖かな視点で見つめ、胸揺さぶる物語へと昇華させた

のが、この作品だそう。
終盤、ブリュノとスティーヴがスクーターで逃げるところで笑ってしまったのだが、先の引用部分を考えると、そういう反応でよかったようだ。こいつら、とりわけブリュノは、馬鹿なことやってんな、いくつになっても、と。
さらに、逃げる前の、ブリュノが水辺にたたずみ、棒のようなもので水をひっかきまわすシーンは、子どもから大人へと成長しかける途上だということを象徴するひとコマだったというわけか。
逃げた後、ブリュノとスティーヴがおぼれかけるシーンは、迫真の演技ですばらしかった。
重松清は11月18日付朝日新聞夕刊におけるダルデンヌ兄弟との対談で

主人公が乳母車を押して車道を横切る時に、車にまるで頓着しない場面がありますが、外の世界と無関係ということを象徴する場面と感じました。

と発言している。観終えた今だからこそ、なるほどと感心する。
恵比寿ガーデンシネマ(1)にて、17:10からの回を観賞。初日なのに、半分以下の入りで、この先大丈夫なのだろうか。