貴志祐介講演会

本日14:30から2時間、早稲田大学11号館402教室にて。同じフロアの別の教室では、又吉イエス勉強会なんてのもやっていた。貴志さんの講演会がなかったら、いきたかったな。
講演は、主催したワセダミステリクラブの人が、貴志さんにインタビューするというか、質問する形式で進んだ。質問する内容は、事前に貴志さんにも伝えられていたのかな。メモを何枚か持って、ときおりそれを見ながら話していた。
最初のほうは、ミステリについてのわりと専門的な話。「こういう本に、このようなトリックがあった」と貴志さんがいうとき、隣に座っていた人は、うんうんと頷いていたけど、私はまったくそれらの本なり話題なりがわからなかった。「ミステリを書く作家というのは誰でも、使用するトリックが、実際の犯罪に利用されてはいけないと思って書いている」なんていうのは、おそらく常識なんだろうけど、私はけっこう感心してしまったりする。
それから、個々の作品であったり、小説を書くという作業についての話に移ったので、門外漢の私にも理解できるものになった。出版される本はすべて、エンターテインメントとハウツー本(そこで得た知識を実生活に使うもの)に分けられ、エンターテインメントの中に、純文学なり、ミステリなりがあるという考え方はいいなあと思った。純文学とエンターテインメントの区別について、さかんに議論されているけど、そんなことはどうでもよくて、大事なのは、面白いかつまらないかだと、私は考えているから。
「『硝子のハンマー』(角川書店)が2部構成になった理由は?」という問いがあった。「最初は最後に探偵(この本の場合、防犯の専門家)が出てきて、タネ明かしという形式を考えていたんだけど、書いていくうちにここの部分がどうしても長くなってしまい、だったら2部にしよう」となったそうだ。
最近の社会問題についても話は及び、昨今プロ野球について、「今年のプロ野球の(裏)MVPは、古田もよく頑張ったけど、やっぱり一場靖弘投手ではないか。なんせ3人ものオーナーをクビにしたわけだから」というコメントは会場の笑いを誘う。
小説以外のメディアでの活動についての話で、以前貴志さんは『選挙でポン!』というゲームの構想があったけど、ダメになったので、どんなものなのか詳細を教えてくれた。それによると、演説なりディベートなりで選挙活動をするのは、まあふつうなんだけど、形勢が不利になってくると、買収ができるようになり、最後は選挙速報の番組になるというもの。けっこう面白そう。誰かがアイデアを引き継いで、完成させて欲しいな。
そんなふうにして、1時間30分が過ぎて、最後30分で会場からの質問を受ける。私が聞きたいなと思っていた、作品のタイトルについて、他の人が質問してくれた。「タイトルについては、周りの人と僕(貴志さん)の考えが折り合ったことが、ほとんどない。何かを想起させるようなタイトルが望ましいと思う。それには、カタカナだけだとちょっと弱い」なるほどなあ。
終わったあと、貴志さんが引き上げないで壇上にいるから、サイン会があるのかなと思って待っていた。「会」として予定されていたわけではないようだけど、並んでいる聴衆に対して、貴志さんは立ちっぱなしで対応。私は『硝子のハンマー』(角川書店)にサインを頂いた上に、握手もしてもらって、大満足で帰ってきた。