映画『幼な子われらに生まれ』

率直にいって面白くなかった。娯楽としてもそうだし、表現の仕方についてもそう。誰が撮ってもこの程度のものはできるだろうとしか思えなかった。
ただ、少ないながら好印象を抱いたところはある。まずは宮藤の演技。困った中年という点で、ドラマ「カルテット」と重なる役柄なのだが、こういうことをやらせたら彼の右に出るものはいなんじゃないか。
あとは絵になる風景が多いのもよかった。斜めのエレベーター(想像を喚起する)、観覧車、屋上遊園地ピッキング労働……。家のなかがごく普通なだけに、外でうまく変化をつけている。
本作を観るにあたっては、複雑な思いがあった。「東京すみっこごはん」の件で、監督の三島に強い不信感を抱いているからだ。人として大切な何かが欠けたやつの作品が、秀作で大絶賛しなきゃいけないレベルだったらホントにイヤだなあと。そうならずに済んで安堵している。
シネマ・ジャック&ベティ(ベティ)にて。

「日経REVIVE2020」9月号

27日の日経に折り込み。連載「私の中の変わらない東京MAP」第2回にゲストで登場。早稲田や学生の今昔について話している。