鎌田慧著、本田勝一・重松清解説『新装増補版 自動車絶望工場』(講談社文庫、2011/9)

単行本は1973年刊、講談社文庫には1983年収録。今回の新装増補版刊行にあたっては、補章の補章「キカンコーとハケン」が追加されている。
著者がトヨタで働いたのが1972年から翌年にかけて。それから40年たっているわけだが、むかしのことを読んでる気がまったくしない。唯一、ボーリングを趣味としてる同僚が多いあたりに、時代を感じたぐらい。
労働そのものよりも、随所に出てくる組合の無意味な状態だとか、企業立病院の狙い(p.217)だとか、そちらのほうが印象に残った。
あと、コンベアは労働密度が高いから法定労働時間を決めたときより大変になっているはずだという主張(p.56-57)や、単純反復不熟練労働は労働者を企業から離れ難くさせるという指摘(p.133)が目を引いたところ。
不況で仕事が減り、労働者の立場が弱くなるなかで、人間が使い捨てられないように考えていきたい。ワタミの労災報道もあって、そんなふうに思った。