小宮良之著『アンチ・ドロップアウト 簡単に死なない男たちの物語』(集英社、2010/3)

サッカー版「戦力外通告」のような1冊。環境が変われども、あきらめずに戦う10人の物語が綴られる。
奥付によると、もとは『Sportiva』とそのwebサイトに掲載されたもの。スポーツ総合誌は、サッカーに興味がない人でも読むだろうが、そこのところ、著者の引きつけはうまい。
たとえば最初に登場する財前について、中田を上回る才能の持ち主だったと強調して書いている。サッカーに無知でも中田なら知ってるわけで、すんなりストーリーに入っていける。
そしてまた、メインにすえているのはサッカーではなく生き様である。そこが面白く読める理由なのかもしれない。あと、飲食店での選手のふるまいを書くところが、著者の特徴かな。
10人のなかでは、とくに小澤の章が印象に残った。寝かかっていた自分を邪魔する川口のプライド、手術するかどうかの瀬戸際でジーコがしてくれた発言etc.