ASH著、切明義孝・津田敏秀・上野陽子翻訳・解説・編集『悪魔のマーケティング タバコ産業が語った真実』(日経BP社、2005/1)

煙草ビジネスの内幕を暴く1冊。危険を知りながらの広告戦略、狙い撃ちにされる未成年・黒人・女性、そして訴えられるリスクを回避する方策などなど。
原著は「Tobacco Explained」という論文で、本書はそれを和訳したもの。とてもエキサイティングな内容で、3年も積読していたことを後悔している。なかでも面白かったのが、安全な煙草などできるわけがないというロジック。なぜか。それを作ることは、逆にいままでの煙草が危険だったという証明になってしまうから。訴訟を考えればまずい、と。

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内容とともに、ブックデザインもすばらしい。横組で、明朝とゴシックの使い分けなど適宜なされている。学術書っぽくなりがちな内容なのにそれを避けられたのは、このへんの工夫が大きいと思う。2100円(税込)の価値は十分にある。

日本専売公社編『たばこの話あれこれ』(日本専売公社総務部広報課、1969/4)

非売品。2年ちょっとまえに古書会館で購入。たしか売価は500円だった。
新書版で上製本って初めて見たかもしれない。むかしは一般的だったのだろうか。
内容は、気楽に楽しめるものになっている。歴史に関する話が多いのだが、丁寧に順を追うのではなく、うんちくっぽくエピソードを紹介しているのが特徴的。あと、日本国内についての言及が多めなのも印象に残った。
もうひとつ。公社が作ってはいるが、「嫌煙運動は悪である」みたいなトーンにまったくなっていない。吸いたい人もいるし、そうじゃない人もいるよね、ぐらいの書き方。たぶん、このころはまだ、嫌煙の声がそんな強くなかったのだろう。
装幀:村上豊、イラスト:おおば比呂司。章題は以下のとおり。

第一章「世界のたばこ小史」
第二章「日本のたばこ小史」
第三章「『たばこ専売』三代の歩みの中から」
第四章「はぐくまれた芸術”その種類と分布”」
第五章「たばこを楽しく吸うために」
第六章「偉人物語たばこ外伝」
第七章「たばこコボレ話」
第八章「パイプ紳士への招待」
第九章「今日から明日へ