近くで見る花火、遠くで眺める花火

定期券を買いに出かけようとすると、親が「きょう、鎌倉の花火大会だから道が混むよ」と教えてくれる。
ああ、そうなのか。毎年この花火大会は、忘れたころにやってくる。
せっかくなので、混まないところへ見にいく。江ノ電鎌倉高校前駅あたり。ぽつりぽつりと浜辺に佇んでいる人たちがいる。
遠くに花火が打ちあがり、それが消えようかというときに、音が遅れて「ぼん」と聞こえる。歓声など何もない。あるのは打ち寄せる波の音だけだ。
遠くからの花火は、打ちあがるときの豪快さよりも、散りゆく姿に目がいく。一般的に、遠くでの花火見物を好むのは女性らしい。でも、しみじみと哀愁を感じさせる、遠くからの花火が、私は好きだ。