垣根涼介著『君たちに明日はない』(新潮社)

対象となった会社の社員を面接し、退職するように仕向ける仕事をしている村上真介が主人公。短編5本からなる連作。
まあ、普通に面白い。『ワイルド・ソウル』に比べると劣っているという声があるけど、ああいう大きな素材がなくても、ちゃんと楽しめるものが書けると証明できたんじゃないかな。
気になったことをふたつほど。

今にしてみれば噴飯ものだが…(p.126,l2)

「噴飯もの」って表現、『ワイルド・ソウル』でも使っていた記憶がある。好きなのかな。あんまほかの作家の小説には見かけない表現。
あと、オアシス21など名古屋が舞台になっている4編目について。日出子という女性が出てきて、おでこが広いのと、その名前ゆえにあだ名がデコになってしまう。
これは読んでいて驚いた。というのは、私の中学時代にも、おでこの広いヒデコさんがいて、デコって呼ばれてたから。うーん、ヒデコさんはでこが広いのが宿命なのかな。

義家弘介著『ヤンボコ 母校北星余市を去るまで』(文藝春秋

指導してはまた持ち込まれる薬物に、辛抱強く向き合っていく様子が描かれている。

ありがとう、みんな。改めてお前らに約束するよ。俺はこれからもずっと震えるほうへと歩いていく。苦しいなら、辛いなら、迷わずに温もりの方へ進め。その先で、俺はきっとお前らを探しているから」(p.24)

あれ、閉じカッコしかないけど、これっていいのかな。